トライオード 真空管アンプキット TRV-A88 製作
エレキットのTU-897を買おうと思っていたのですが、どこも売り切れのようなので、+2万円でこのアンプを買ってみました。調べた範囲では日本橋のシマムセンが一番安かったため、同社から購入。
重量物のため、二重箱になっていました。
トライオードのロゴがプリントされたサテンの巾着に入っています。このあたりの配慮はキット/完成品を問わず、購入者にとって期待感を増すうまい演出だと思います。発泡フォームをくり抜いた専用の梱包です。箱はとっておいた方が良いでしょう。
価格以上のルックス。特にトランスの塗装の美しさは特別。真空管の保護ボンネットも頑丈に出来てます。機構部は組立済です。(基板も組立済)
KT88の勇姿。トライオードの球が使われています。12AX7はノーロゴでした。手持ちの中国球12AX7と同じ電極構造から中国球であることは間違いありません。中国球の12AX7は結構いいと思います。シーメンスのAX7も持っていますが、ヒーター温度が低いためか、トロッとした音が好きになれません。
ステンレスの鏡面と肉厚のアルミパネルの重厚なデザイン。大手メーカだと肉厚のパネルは押し出しだったりするのですが、これは切削で仕上げられているようです。作業で傷を付けないよう、養生しておきます。ルックスは非常によいです。
ボンネットをつけるとトランスと面があうため、ひっくり返すのが容易です。配線材がシャシ内に入っていました。ヒータ線はすでにツイストされています。配線を束ねるインシュロックや熱収縮チューブも入っていました。必要な工具は+ドライバ、半田とこて、ニッパーがあれば最低限間に合います。バイアス調整のためにテスターは絶対必要です。ここらが初心者を対象に測定器不要のエレキットとはポリシーが違うんでしょう。もっとも、テスターくらいは何があっても必要です。
基板は組立済。入力ピン〜セレクタ〜VRまでと、AC1次側は配線済です。それ以外の部分の配線をするだけで完成するようになっています。初心者に対して配慮しているのだと思います。(老眼対策もあるのかもしれませんね。笑)
基板全景。両面ガラエポ、スルーホール基板。
配線完了。電源2次側とOPTまわりの配線だけです。配線箇所は少ないのですが、付属されている線は太くて固いため(AWG18)、美しく配線するには苦労します。チョークのリードは切らずにとぐろを巻いておきました。
コーヒーを入れて点検、火入れ、調整。配線箇所が少ないため、点検は1分もあれば出来ます。調整はKT88のバイアスだけです。B電圧は400Vです。感電しないように注意します。
音だし。2A3のアンプと入れ替えたためか、第一印象は「あっさり」していると思いました。エージングが進むにつれ、音は変わります。KT88がジャズ向きだといわれている意味が何となく理解できるような気がします。確かにノーエージングでもジャズは非常にマッチしてます。2A3のほうがオールマィティな気はしますが、エージングによって変化するため、評価は尚早でしょう。
気付いた点など
機構部、基板、配線の一部は完成済のため初心者でも組み立てられるようになっています。初心者を対象にするなら、組立説明書はもうすこし親切であったほうが良いと思いました。
終端は3結です。基板にはUL用の端子が出ていますが、OPTにはありません。1次側には3本の端子があるようなので、もしかするとUL接続できるのかもしれません。OPT1次側の真ん中の端子は電気的には確かに+Bとプレートの間のどこかに接続されているようです。変成比はわかりません。発振器から信号入力して電圧測定すればわかるのですが、そこまではしません。
回路図のVRは100kのBとなっていますが、実際のVRは250kのAです。ケミコンには回路図には無いブリーダー抵抗がついています。説明書にも言及されてます。
配線箇所は少ないのですが、線が太く固いため美しく仕上げるには時間がかかります。チョークコイルはリードタイプのため、とぐろを巻いて大半のリードを残しておきました。
電源のケミコンは基板用の足になっています。このため、少し半田しにくいです。ラグタイプのケミコンはすでに製造中止なので仕方ないです。秋葉の店頭でまだラグタイプを見かけますが、あれは在庫のみです。必要な人は今のうちに買うしかありません。
1段目と2段目(12AX7Aの2ユニット)はDC結合されており、2段目からカソードフォロワで終端をドライブしています。カップリングコンデンサは2段目と終端の間のたった1個です。VRから1段目グリッド間も直結です。コンデンサが減りますが、場合によってはこれによってVRのガリが早まる可能性はあります。(グリッドリークによるDCによってVRが電蝕する。今のVRはそんなことは無いのかもしれません。)また、ソースからDCが出ていないことが必要です。音楽信号はVR-AX7-AX7-カップリングコン-KT88-OPTで出てきます。経路が少ないためか非常にストレートな音が出てきます。
トランスはOPTと電源をまとめて1つのケースに入れていると思います。後からシャシにカバーを掛けたものではありません。3トランスが1ケースに入れられ、デッドニングのため固められています。このため叩いても鳴りません。また、OPTのみ取り出すようなことは出来ないと思います。
電源パイロットのブルーLEDはちょっと明るすぎです。適当に暗くしてもよいでしょう。
電源ノイズ(ジー音)は少しあります。エレキットの2A3は全くないため、少し気になりました。AX7をとってもノイズがあるため、終端で乗っているようです。最も、エレキットの2A3は異常にSNが高いのです。
どうも電源ノイズは外来のようです。エアコンのインバータが怪しいような気がします。バイアス調整していて気付いたのですが、電源電圧の変動をバイアスは結構受けます。+Bはチョークによってかなりノイズが押さえられているので、C電源からノイズが侵入しているかと思われます。C電源は安定化されていません。ツエナによる安定化があった方がよいと思います。
50時間ほど通電しました。悪い意味でのあっさり感(TRアンプのような音)はほとんどなくなりました。2A3では聞こえなかった音が聞こえます。特にギターあたりの音域。
f特を測定しておきました。ピークは100kちょっと手前にあるようで、素直な特性だと思いますが、これが高域の特徴になっている可能性はあると思います。(Kenwood
AG-204D/FLUKE95)
どうもジー音の混入もとはヒータのような気がします。C電源にはそのような波形は見られません。CR時定数を考えても、そのような周波数は入らないでしょう。でも、鳴ったり鳴らなかったりするのはなぜ?
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