トロイダルコアによるSWRメータ
SWRメータはアマチュア無線では必携とも言える計器で、簡単な構成のため自作されることも多い。
トロイダルコアを使ったものは、感度、再現性もよく、定本「トロイダルコア活用百科」(通称トロ活)でも紹介されておりポピュラーな構成だ。
当方もAH-4自動コントローラのSWR検出部として使っている。
シンプルな回路だが検波部を含む完全な説明を見つけることはできなかったので、原理を改めて考えてみたい。
検波部なしの原理回路を考える。
コアを中心に左右対称なので、左半分のみ抽出しよう。
C1,C2は静電分圧回路となっているが、抵抗分圧でもよい。
A点の電圧VAは、
注意したいのは、トランス2次側の電流の向きと大きさである。
レンツの法則のとおり、1次側の磁束を打ち消す電流が流れる方向に2次側に起電力を生じ、その磁束の大きさは1次と同じである。
したがって、B点の電圧VBは、
ところで、IF,IRはVF/Zo,VR/Zoと書き直せるから、
定数部分をK1と置くと、
以下のようにまとめられる。
すなわち、VAとVBの和と差には、
VFとVRを分離して取り出すことができる。
これが、原理回路CMカップラのミソである。
検波回路部を考える。
この部分は原理回路でいう電圧源AとBをダイオードで結んでおり、一見何をしているのかよくわからない。
考えやすくするために、若干変形しよう。
ラインインピーダンスZoは分圧回路のインピーダンスに比べ十分低いため、等価的にはコンデンサを1個にまとめることができる。
電圧も考えやすくするためVのみとして、AとB同相、逆相、0、180degと場合分けで考える。
コンデンサの初期電圧は0Vである。
Case1,2は同相の場合で、ダイオードは常に0バイアスとなるから電圧源Bは出力に及ばない。
また、コンデンサはチャージされない。
出力はVまたは-Vである。
Case3,4は逆相の場合で、先にCase4からいこう。
コンデンサから見て電圧源は直列になっており、ダイオードは順バイアスされ導通、コンデンサに2Vがチャージされる。
電圧源Aは-Vのため、出力は2V-VでVとなる。
Case3ではダイオードは逆バイアスされ、電圧源Bは切り離される。
事前にチャージした2Vと電圧源Vが直列加算され3Vが出力される。
つまり、出力はVまたは3Vとなる。
正確には、コンデンサに2VがDCチャージされ、それが±VのACに重畳した形となる。
全ケースの波形は次のようになる。
残りの回路は1次LPFだから、同相のCase1,2ではDC0V、逆相のCase3,4ではDC2Vが得られる。
C1,C2は分圧回路としての働きと、DCホールド回路としての働きを兼ねた巧妙な構成になっている。
一見何をしているのかわからないのはこのためだ。
また、ホールド回路としての働き故、抵抗分圧では成立しない。
検波回路は、同相キャンセル、逆相出力、要するに減算回路であることがわかる。
つまり、コア左半分のTX側にを、右半分のLOAD側にをDCとして出力する。
ここでDCとACが混在しているが、AC電圧をRMSで考えるならDCは√2倍になることは言うまでも無い。
もちろん、
であるが、左右でCR定数を変えることはないだろう。
あとはSWR定義式
で計算すればよい。
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Created:2019/12/06
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