安物テスターの実力
このところ秋月などで1000円程度でデジタルテスターが売られているので、一つ買ってみた。個人用としてはフルークが2台あるので、これ以上不要なのだがこれは会社でちょっとした確認に使っている。
外観
可もなく不可もなく、というところか。ケースは安っぽい。hFE測定があるのがポイント(フルークにはない。)
転がっていたボール
ロータリスイッチを廻していたら、クリック感覚が急になくなった。その代わり、なんかコロコロ音がするようになった。開けてみると、このようなボールが飛び出していた。このボールはロータリスイッチのクリックを出している。
基板部品面
インターシルのワンチップDMMを中心に、その他CRがついている。部品の実装はかなりいい加減である。半田も上手いとはいえない。
基板裏面
ロータリスイッチ部には金メッキが施されている。液晶は導電ゴムで基板に載っている。当初導電ゴムの接触が悪く、点灯しないセグメントがあったのだが、上ケースの液晶をホールドする部分に紙を入れて液晶を押す力を増したところ直った。実装もかなり適当のようだ。
クリアランス不足
上記のパターンには測定電圧がかかる。やばいのは左で、入力端子は分流器を通じてコモンへ、右のパターンは電圧測定端子につながっている。つまり、この0.5ミリ程度の間隙に測定電圧がモロにかかる。これでAC100VやDC1000Vを測定するのは勇気が要る。本来、このようなハイパワーな回路を測定するためにはIEC1010カテゴリ2,3の安全基準に合致したテスターが要求される。安物はそのような認証を取得していないし、上記のような設計では認証は通らない。基板パターンは遮光テープで原盤が作られたような感じだ。特にヒューズの上なんかがそんな感じ。
直流電圧測定
フルークとパラにしてDC電源測定。DCはかなり良い。
直流電流(低電流レンジ)
シリーズにして測定。電流も正確である。
直流電流(高電流レンジ)
高電流は誤差が出やすいものだが、正確である。
内部抵抗は低め(1メガ)
内部抵抗はDMMとしては低めの1メガのようだ。
結論として、このような安物のテスタであるが精度は問題はないようだ。しかし、機械的な構造と電気的な安全性は不十分のようだ。各種安全規格の認証も受けていないようなので、低エネルギー回路の測定にのみ用い、ACラインの電圧測定や高圧回路の測定は避けた方が良さそうだ。その点にさえ注意すれば十分に実用になる。特に1000円前後の価格でこれだけの精度得られるのなら、ある意味でお買い得である。もっとも、大部分はワンチップDMMICの恩恵であり、受動部品で精度に関わるものは抵抗程度なのだが。