ヒアリングと課題


【ヒアリング】

作った当初から定位が非常によいことに気づく。特にパーカッション系の音源がピンポイント的に決まるのはある種の快感である。
また、定位が良いせいか非常に立体感が感じられる。
低域のダンピングが良いというか、低域の量感が多いのも特徴のようだ。(変な話だが。)
またppからトゥッティに向かうような音量変化に対して、無限に音がでかくなるような感じが何度もした。小音量時にも音痩せが少ない感じもした。

作った当初から1月ほどして音質が若干落ち着いたようだ。基板丸裸で動作させていたのをケースに入れた影響もあるが、音の不自然なギラツキ感のようなものが無くなってきた。ケミコンのエージングが進んだ影響もあるだろう。

現在のところ音質には満足している。CDプレーヤ(DENON DCD-S10II)はトランスポートオンリーとなった。
光と同軸どちらがよいか聴き比べたが、個人的には同軸の方に軍配が上がるように思う。石英ファイバーも試してみたが、プラスチックに比べてそれほど変化したとは思えなかった。メータ70円の1.5C-2V(RCAプラグは30円)のほうが個人的に好結果だったと思う。ハイエンドのDACがトスリンクを採用しないのは、それなりに理解できるような気もする。

その後ケーブルを3C-2V(安物)30センチ程度、プラグを秋月の150円くらいの(テフロン材で絶縁し、75オームに整合されているらしい)ピンプラグに変えたところ、若干音質変化があったようだ。臨場感が増したというか…、そんなことあるのか??回路設計者としても理由が説明できない。ケーブルによる音質云々については元々信じないのだが。



【課題】

若干の課題が残った。

・無信号時に同軸入力アンプが軽い発振をする

同じ回路でも発振しないものもある。石による個体差かもしれないし、同軸出力のためのパルストランスドライバも兼ねたことが原因かもしれない。
手は掛かるがディスクリートでアンプを組んだ方が良かったかもしれないが、正常な信号が阻害されることはないため「気にしなければそれでよい」という問題だと思う。

・無信号時にマスタクロックを停止させる

信号入力が無い場合でも44K用のVCXOが発振し、同時にfs表示LEDが灯っている。
無信号時にLEDが消灯することで、信号入力の有無も確認できるため、設計段階でも気づいて盛り込むべきであった。
これはDIRのエラー信号をfsデコーダ(HC138)に入力することで実現できる。

・TVIが出た

まだアースポイントを確定していないためもあるが、TVIが出る。ビデオデッキのチューナを使うとIが出ないから、TVの基本波に影響しているのではないことが推測できる。
輻射ノイズも含め、アースポイントを探る必要がある。
また、この点からも信号未入力時はマスタクロックを停止させた方がよいと思われる。

・π型LPFに入力するレベルについてヒアリングが必要

どの程度の電圧でπ型LPFをドライブするか実験していないため、音質面からはさらなる追求が必要である。このためにラインドライバアンプが反転型になるように設計してある。(反転アンプは負ゲインに設定できるため。)ちなみにオペアンプでオーディオ回路を組むときは反転型に限る、という人もいる。

・オペアンプのヒアリングも必要

当初OPA2604(@800円)にしたが、安価なNJM4580(@100円以下)のほうが新鮮なイメージがしたため、オペアンプを変更した。一般的な2回路入りオペアンプならどのタイプでも良いため、ヒアリングによって選択するのも今後の課題だろう。今のところ4580の音には満足しているが。

・ノイズシェーパのノイズが聞こえる

ΣΔ型DACの泣き所であるが、可聴帯域内にノイズシェーパのノイズが残っており、アンプのボリュームを上げると無音時にホワイトノイズっぽい音とホロホロ…という低周波がかすかに聞こえる。通常はDACの絶対ゼロ検出部がノイズシェーパを停止させてしまうためこの音は聞こえないが、デジタルフィルタでディザを入れると絶対ゼロ検出部が動作しなくなり(ディザのため無音時でも信号(ただし合成ベクトルはゼロ)がある)ノイズが出るようになる。但しこれは-90dB以下であるから数値上は無視できるはずだ。

・まれにサンプリング周波数切り替え時にノイズが出る

通常の使用では問題ないが、DATなどで1本のテープに違うFsの録音をしていると切り替えノイズが出ることがある。
恐らく、DIRエラー出力のアサート遅延か、デジフィル、DACのリセットが直ぐに働かないためであろう。たぶんDIRエラー出力が原因だと思う。

・今後の予定

DACボードをマルチビットや最新型のΣΔにしてもいいかもしれない。マルチビットDAC(BB1702のような)はバイポーラ電源を要求するため、拡張性を考えると本機のDAC電源部もバイポーラ(±15〜20V程度)にしておいた方が良かったかもしれない。
(最もCDプレーヤ(DENON DCD-S10II)がBB1702を使っているため、BBのマルチビットにはあまり興味ないが)

とりあえずのところ完成したのでこのプロジェクトはクローズするつもりである。



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