2010/05/15 2010/05/16

ピクシーシュリンプ用恒温装置


東急ハンズで小瓶に入ったエビを購入しました。こちらのサイトの商品です。閉鎖環境で生息できる比較的丈夫なエビのようですが、適温は20〜28度と広いものの夏場や冬場の無人となった部屋では生存できない温度範囲です。冬期保温用としてヒーターも売られていますが、夏場の室温 は30度を容易に超えてしまうことから、加温・冷却可能な年中使える恒温装置を製作しました。彼女と2つ買ったので装置は2台作りました。


装置全景(2号機)


中のエビさん達(体長10mm弱)

24℃くらいがちょうど良いのか、かなり動き回っています。
エサを探してカラーサンドを摘んでいるようです。

 

基本的構成

加熱および冷却を行う必要がありますので、ペルチェ素子を中心とした恒温槽として基本構成を考えます。


構造案


実際(もっと浅いケースでOKでした...)

 

エビを鑑賞する観点から、ビンは外部からよく見えるように配置すべきですが、水温制御の観点からは外部と熱絶縁すべきで、ここに一つ課題があります。すなわち、温度センサが水温を直接計測する構成ではないため、ビンと雰囲気間の熱移動によって、センサと水温との温度差が現れます。今回は精密な温度制御はエビの生息に対して不要と考え、ある程度は妥協することとします。

あまりに温度差が大きいのであれば、放射温度センサによってビン表面温度をフィードバックすることとします。

下面より加熱(冷却)しますので、加熱であれば温まった水が上昇することで対流による均一化が期待できますが、冷却の場合は冷えた水が下にたまって大きな温度差ができるかもしれないという心配もあります。

このあたりの課題の確認と定量化については雰囲気温度の変化が必要で、継続的に蓄積してゆく予定です。


ペルチェユニット

ペルチェ素子を中心とした構造物をペルチェユニットと呼ぶことにします。 ペルチェ素子、ヒートシンクおよびファン、ビン下のヒートスプレッダと保温材から成ります。

ペルチェは秋月の一番安価な6Aタイプを用いています。これは定格2オーム程度であることから、ACアダプタ(5V,2A)との適合から決めました。もちろんPWM制御しますが、フルデューティで計算上2.5Aとなるため、アダプタ上限の2Aでも10ビットPWMならかなりのダイナミックレンジがとれます。

ヒートシンク&ファンアッシーは中古のCPUクーラーが最適ですが、探しても良い中古が見つかりません。なんとか適合するサイズがあってもすべてファンが12Vでした。今回は単一5Vの設計とするつもりなので、コストアップとなりますが、仕方なく千石 電商で新品の放熱器+ファン(5V)を購入しました。

ヒートスプレッダおよび台座板は1.5mm厚のアルミ板です。台座をスペーサで浮かしてシャーシに取り付ける構造です。

温度センサはヒートスプレッダ上に中空配置します。本来は水温を計測すべきですが、使用感に難が出ますのでチャンバ内に宙ブラ設置しました。これは先の課題ともつながっており、温度センサを宙ブラ配置すれば、少なくともヒートスプレッダにセンサを貼り付けるより水温の寄与率が上がることが期待できるからです。


コントローラユニット

マイコンを用いたPI制御方式としました。外乱(雰囲気温度変化)も小さいと考え、D制御は不要と考えています。

使用したマイコンPIC18F2550には10bitADコンバータ、10bitPWMが内蔵されており、わずかな外付け部品でコントローラが構成できます。16Fシリーズのマイコンでも十分ですが、将来LEDで照明したいこともあり、PWMを2ch搭載していること、以前GPSロガーを作った実績もありこの石を選びました。

温度センサは秋月の3端子温度センサを用いています。電源を与えれば10mV/℃のゲインで温度出力が得られるため非常に使いやすいセンサです。温度センサは2個取り付けてあります。1個は外気温でも計ろうかと考えたからですが、実際は遊んでいます。

測定範囲は0〜40℃程度で十分ですので、リファレンス電圧400mV程度をTL431より分圧して得ています。

ペルチェはPWM制御されます。N-PowerMOS FETはPICのピンとダイレクトに接続できるため非常に便利です。ペルチェの加熱・冷却切り替えのため、電流の向きを逆転させる必要があります。ここはリレーを用いました。ベスト構成はSW素子をフルブリッジに配置する方式ですが、そこまでは必要ないでしょう。

ファンは常時回しても良いのですが、騒音の観点から停止、弱、定格の3段階調節としました。弱はダイオードのVFでドロップさせています。

ユーザインタフェースとして、LCDとSWを実装します。

コントローラはユニバーサル基板に実装しました。いつもはOlimexにスペシャル基板をオーダーしていますが、今回はリード部品だけで構成されているため、穴あきで十分です。 しかし、2台分作るのは面倒な作業です。

十分にデータシートを見ないで回路設計したため、ピン変更が発生しました。このため、液晶のデータバスがPORTを跨り、変な構成になってしまいました。 根本的な配線の修正は面倒なため、ソフトで対処しています。このCPUを使うにあたって、以下の注意事項があります。

ソフトウェア

高速な制御は必要でないので、100ms周期で制御しています。1sでも十分です。処理時間に余裕があるため、浮動小数演算としました。
当然ながら、C言語で開発しています。コンパイラはHitecです。もうアセンブラには戻れない気がします。
PICKit3でデバッグしますが、

みたいです。そのほかは問題なく使えますし、ICD有りと無しでは全然違います。

PIコントローラおよびユーザインタフェース(目標温度設定、MIN,MAX読み出し)などが主要な機能です。
大したソフトではありません。18F2550のメモリ容量からすると非常にもったいない使い方だと思います。

設計データ

回路図
ソフト(まだ作成途中、適合不十分)

おまけ


調子いいのか脱皮したみたいです(10/05/16)


脱皮を奪い合うエビたち あっという間に無くなってしまいました


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