Sony BRAVIA KDL-46NX800 電源修理


はじめに

2010年製ソニー液晶TVが故障したため修理を行った。
電源基板のバックライト回路の故障であった。

▼!危険!▼
電源基板にはAC100Vのほか、PFC400V、バックライトにも±200V程度の電圧がかかっているため危険を伴います。
また、作業前にコンデンサ放電を確認する必要があります。

故障時の現象

1.電源ON、起動音が出て10秒程度経過、再び起動音を鳴らし電源が落ちる
2.電源ON、起動は成功するがLEDバックライトが徐々に明るくなる
3.起動中に映像ソースが無い黒画面にすると電源が落ちる

電源が落ちた場合、赤LED6回点滅(バックライトエラー)となる。
上記のほか、まれにBCAS読取エラーが出ることもあった。
また、後述の診断情報ではDC_ERRORが1件記録されていた。

事前調査

電源基板のバックライトエラー(BL_ERR)がH(3.3V)になると電源が落ちることがわかった。

(電源端子配列、回路図より)

故障現象の赤LED6回点滅とも合致する。
このことから、電源基板のバックライト点灯回路の故障と推定される。
ソニーはグローバル商品なので、ネットを隈なく探すとサービスマニュアルや回路図が見つかる。
このことは修理において重要なポイントで、次もソニーかなぁと思った次第。
見るとConfidentialと書いてあり、管理のいい加減な海外で流出したものだろう。

(類似機種サービスマニュアル表紙)

なお、どうやっても国内仕様サービスマニュアルは見つけられなかった。
国内/海外仕様の違いはチューナーユニット程度で、あとはほぼ一緒だから問題無い。

回路図の検索 これ や これとか

電源回路の解析

バックライトLED調光はPWMで点灯DUTYを可変しつつ、ON期間のDC電流も制御する2段階方式となっている。
ON電流制御はSW電源(共振型)の1次回路FBで実施している。
低圧主回路(12V)もこの電源から供給しているいるため、調光制御の影響を受けないよう、別に降圧コンバータが設けられている。
SW電源のFBは上記LED電流を目標としてLED電圧を制御しつつ、低圧主回路の限界を担保する構成のようだ。
したがってエラーアンプは3個あり、LED電流、LED電圧はFB成立、低圧主回路はおそらく通常はFB不成立だろう。

バックライトは多数のLEDを直列にしており、かなり電圧が高い(300〜400V)。
SW電源トランス2次は3回路あり、1回路は低圧主回路用、2回路がバックライト用となっている。
この2回路は各々逆位相で半波整流、直列利用としており、センターGNDとして+200V、-200Vといった具合だ。
LED点灯主回路は以下のようだ。

奇妙なのはバックライト回路GNDと主回路GNDは独立しており、GND間にヒューズ(0.5A速断)が存在する点だ。
回路上このヒューズに電流は流れないのである。
おそらくバックライト回路の主回路地絡保護だろう。
このヒューズは2022年か2023年に切れており、ガラス管ヒューズ(0.3A)を付けていた。
このヒューズ切れは本機世代のソニー液晶テレビで多発しており、「ブラビア LED6回」などで検索すると見つかる。
切れる理由が地絡ならヒューズ交換で復活しないはずだが、実際復活するので地絡ではなくヒューズ劣化だろう。
速断ヒューズなのでヒューズエレメントに強度がなく、チップなので基板の熱応力などを受けてクラックが入るのではないか。
これはソニータイマーといわれても仕方ないと思う。

ところで、バックライトエラーは下記いずれかの条件でONとなる。
前述のヒューズが切れるとGNDを失うため、どちらも異常となるはずだが、今回ヒューズは正常だった。

・LED電圧閾値以下
・LED ON電流FB破綻

ON電流FB破綻は、LED電流エラーアンプ(OPアンプ)出力がレンジ外となったことで判別している。
およそ1.3V〜7.4Vが正常範囲内で、逸脱するとエラー判定となる。
単電源9V駆動なので、妥当なところだろう。

実機調査と修理

片面基板のため表面実装部品は全部裏側で通電プロービング困難だが、多量のジャンパが表面に走っているため、ある程度プロービングできる。

異常な挙動を示すLEDエラーアンプ出力(TP)の様子をこの方法で捉えた。

電源ON後、BL_ON指示立上がりからLEDエラーアンプ出力はゆっくり上昇する。
故障現象2のバックライトが徐々に明るくなるのはこれと関係しているようだ。
1.5V程度を超えるとBL_ERR=OFFしさらに上昇を続け、7V程度でBL_ERR=ON、ここで一度電源OFFとなる。
再び起動音を鳴らすが、すぐにエラーとなって落ちる。故障現象1の様相だ。
一次ローパスがあるが時定数0.2s程度なので、これほどゆっくりした挙動はおかしい。
またレンジ外れからFB成立しておらず、この付近の故障と推測した。

故障部品は、エラーアンプ(OPアンプ)、電流検出回路のアナログスイッチ(MOSFET)、目標LED電流ミュート用トランジスタあたりだろうと当たりをつけて調査。
前述ヒューズ切れでGNDを失うとバックライト回路は浮くため、LEDエラーアンプ付近に異常電圧が加わって壊れる可能性が考えられる。
結局OPアンプと、OPアンプ-入力に繋がる100Ωの交換で復活した。

(交換パーツロケーション(交換前))

100Ωチップ抵抗は通電プロービング用に細線をはんだ付けした後オープン故障していた。
FB働いていないはずなんだがOPアンプ+/-入力間はmVオーダーで怪しいので交換した。

OPアンプは強力な接着剤で基板に固定されており、取り外しに難儀した。
低融点半田で溶かしてもピクリとも動かず、足を切ってペンチでひねって外したが、基板レジストが剥がれるくらい強力に接着されている。
おそらくチップヒューズ、チップ抵抗も同様だろう。
このあたりがチップ部品故障に影響しているような気がする。

診断情報の表示

スタンバイ状態で、リモコンの以下キーを順にすばやく押す。
[画面表示]→[5]→[音量−]→[電源]

以下のキーシーケンスで記録されたエラーがクリアされる。
[8]→[0]

以下のキーシーケンスでパネル累積動作時間がクリアされる。
[7]→[0]

電源OFFでダイアグを抜ける。


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Created:2025/03/09
Updated: