Onkyo FR-V77 修理


はじめに

2020年5月の夜中、何も操作していないのに突然ガタガタ音を発生。MDユニットが故障していた。
CDも不調で廃棄しようと考えたが、ディスクリートアンプやら意外とこだわった作りで修理することに決定。
どうせなら劣化部品の交換と一部グレードアップも行う。

本機のサービスマニュアル(SM)はネットでは見つけられませんが、FR-155という機種のSMが見つかりました。
回路構成はほぼ同一で、一部定数、基板への回路配置が違います。
例えば、PAの整流・平滑は本機ではトランスブロックにありますが、FR-155ではPA側にある等。
修理、改造時の参考になります。

電源ユニット(トランス一体)

ユニットは壊れていない。予防処置。
コンデンサ一部交換、一部再はんだ。

トランスですがTAMって書いてあります。タムラでしょうか?
コンデンサはニチコンの標準品、VX。高級品は使えませんが、良い部品が使われてます。
中華コンデンサなどは当然ありません。

3300uF/35V×2はPA用±電源、 計測上は劣化が見られないため温存。
ICアンプだと単電源でしょうが、SEPPなので±電源です。
このクラスのコンポでは異例だと思います。

1000uF/16Vはサブトランスから常時給電、劣化しており交換。

このパーツチェッカのVlossというのは、測定のために充電したコンデンサの電圧低下率のことらしいです。
要は、漏れ電流、並列抵抗成分ということになります。

理想的には電解コンデンサを全部交換すると良いのですが、手間がかかります。
しかし劣化は一様でないため、部分部分の交換が費用と手間、効果ではバランスすると思います。

電源ユニット(レギュレータ基板)

電解コンデンサすべて交換。

本ユニットのコンデンサは470uF→170uFなど、劣化が著しいためすべて交換。
特に、放熱器つきのレギュレータはかなり熱く、基板も若干焼けています。

ひときわ大きい電解は22000uF/16Vで、容量抜けは見られないが交換。
ほぼ常時給電されていたためです。
(エナジーセーブ機能がONだと給電されないが、うちではほとんどOFFだった。)

オリジナル品はh=45mmで、取り替え品は50mmとなりますが、ギリギリ入ります。
オリジナル、取り替え品ともにニチコン製で、同一スペックに対しサイズUPしていました。
通常、コンデンサは同一スペックなら、時代が下ると小さくなります。
これは珍しい例ですが、おそらくリプル電流、ESRなどはスペックUPされていると思います。
ブリッジはパラになってます。電流容量的にはパラにするほどでは無いと思います。
PA電源のブリッジもパラでした。何か意味があるのでしょうが、わかりません。

主オーディオユニット(PA含)

カップリングコン等、オーディオ信号経路に関わる部分は無極性MUSEにグレードアップ。
バスブースト部分はフィルムコンに交換。ブーストは使いませんが、常時回路が入っているため。
しかしMUSEはでかいです。無極性だと理論上サイズは4倍になります。

このクラスでは異例のディスクリート構成。
このあたりがオーディオ専業メーカーの矜持ってとこでしょう。

マイコン・CD信号処理ユニット

DAC出力カップリングをMUSE無極性に変更。
コストがかけられないので、CDプロセッサ内蔵のDACです。
マイコンバックアップのスーパーキャパシタが錆びていたため交換、おそらく液漏れです。

CDデッキ

ゴムベルト劣化のためトレイ出ず。

分解でわかりにくいところ。
トレイはシャシ両端の赤矢印部分を広げて引っ張ると外れる。

ベルトカバー?は赤丸を引き上げて矢印の方向へスライド。

ピックアップとベルト、定番の交換。いずれもCDパーツマンより購入。
郵送してもらいましたが、CDパーツマンはうちから車で10分かからないくらいの市内でした。
ピックはゴミ・キズ防止のため組込みまでテープを貼っています。

ありもののCDでアイパターン確認。調整はしてません。

MDデッキ

ローディングメカの駆動ギア破損。
これが深夜のガーガー音の原因と思われますが、なぜ勝手にガーガー鳴り出したのか不明。
これは修理できないので、CD不動のFR-V77をオクで落としてユニット交換。

タミヤ製ギヤボックスの一部ギアが丁度同じサイズなので、切り貼りして復活する道はありそう。

(20/07/07)

ギヤ修理してもMDデッキ復活せず。
MD基板調査の結果、制御CPU(CXP740010)停止(12MHzクロック発振停止)が判明。
電源、リセット解除、発振子単体はOKなので、CPUチップ故障だろう。
CPU故障→ローディング暴走→ギア破損と推測。

フロントパネルユニット

MD摘出した部品取りFR-V77のVFDが明るいため、基板交換。

スピーカ

吸音材が加水分解でボロカスになっていたため交換。
ボロボロなのもですが、量も少なく効果は無いと思います。
手持ちの緩衝材スポンジ(廃棄物)を張り込み。ゴミがへって一石二鳥。
貼り付けず、宙に浮かすと良いとか、いろいろあるみたいです。

驚いたのがネットワーク。
このクラスでは普通、ウーハーはフルレンジ駆動で、コンデンサだけでローカットしてツィータ駆動するものが多い。
10万クラスでもそうなっているものもあるが、これはまともなネットワーク。
電解コンをフィルムにするとかなり質感が変わると思います。
秋月フィルムコン、安くてオススメです。
15uF→10uF+4.7uF (150円+80円)
3.9uF→3.3uF+0.47uF+0.1uF (70円+40円+30円)
片Ch、370円です。交換しない手はありません。
もっと高価なフィルムコンはいくらでもありますが、これで十分です。
不格好ですが、見えないので問題ありません。

まさにLCRといった感じです。

裏側も無理なく半田できた。

2001年製なんですね。現時点でSPエッジは傷んでいないようです。

結果

正常に作動するのはもちろんですが、驚くほど音質UPしました。
音離れが非常に良い。スピーカが鳴っている感じがしません。
これほど変化するとは思いませんでした。変化シロが大きいのはSPだと思います。
本機は嫁コンポなのですが、嫁も音質変化がわかるようでSPが鳴っているように聞こえないといいます。
オクでSP込み1000円とか2000円で出ていますが、手をかければかなり良くなるポテンシャルを持っているようです。

この機種のエナジーセーブ機能はONで使いましょう。以下のメリットがあります。
・メイントランスへの給電カット、配下の電源回路の劣化抑制
・省電力

追い修理(2023/03)

CD再生不可。(No disc)
原因はピックアップ光学系の汚れ。
対物を取り外しビームスプリッタを見ると曇っている。
中央上の少し透明な部分はたぶんエアブローした時のもの。

IPA綿棒で拭き取るとこの通り。

KSS-213Cデータシートから光学系の構造。

アイパターン振幅1Vp-pになるようレーザ出力を調整。

再生中にピックの半固定を回す。

ピック内部は完全密閉されているわけではないので、長期にわたると汚れの堆積は仕方ないところだろう。
あの薄い膜のような汚れは何だということだが、メカ部分の潤滑剤が長い間に蒸発、堆積したものではないか。

今更考えてみると、よく言われるレーザダイオードの劣化はほとんど無く、光学系の汚れが再生不良の真因だと思う。
今回、画像は撮っていないがレーザパワー測定もしており、ダイオード定格電流でピック最大光出力400uWを確認している。
レーザ駆動回路はAPC(光出力フィードバック)なので、レーザが劣化しても自動的に電流UPして光出力一定に保たれるのだ。
劣化が進んでフィードバック限界に達すると、もはや半固定VRを回しても変化しないのである。

つまり、レーザが劣化するから半固定を回すというのは理論上正しくない。
光学系の汚れで損失が増え、光出力を増加させる必要から半固定を回す、というのが正しい。

ピックのPDは4個とか6個入っていて、光量差でトラッキングを行っている。
汚れたら光パワーUPしてある程度延命できても、汚れによる光の拡散で光量差、つまりS/Nが低下する。
やがてパワーUPしても"No disc"になってしまうから本質対処、掃除するしかない。


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Created:2020/05/23
Updated:2023/03/25